王様の恋

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 その夜は、新一のベッドの上でずいぶん遅くまで話していた。お互いに大泣きしたせいで目は真っ赤で、明かりをしぼっても光が染みて痛かった。それでもニ、三週間分は笑ったと思う。一、ニ年分の涙を流してしまった後だったから、二人とも躍起になって損を取り返そうと必死だったのだ。
 子供みたいに枕の取り合いをして、シーツの被せあいをして、ままごとみたいなキスをした。ちょうど冬が駆け足で近づいてきたような夜で、新一は、足や手の爪先が冷えてならなかったが、快斗はそんなこと全て知っていると言わんばかりに、そこここにキスを落とす。
 要するに、いつからと区別をはっきりつけられたわけではない。気づいた時には、自然とパジャマは気崩れていたし、キスはずっと深いものになっていた。
「……またコナンに戻るの?」
 キスの合間に快斗が尋ねた。新一は何度も降って来る唇を受けながら、そうなるかなあと少しだけ笑う。
 新一でいられないことが寂しくないわけではないが、いつか手に入れる当たり前の未来を思えば、今の我慢が大切なこともわかっていた。
「いいじゃん、今年中に戻れるんだったら」
 笑って言うと、ぎゅっとしがみつかれる。
「ヤじゃん。ちっさくなったら、こんなことなかなかできないもん」
 快斗は子供みたいなわがままを言う。
「でも副作用もヤなんだろ?」
「そうだけど。クソ、お前、俺のなのに」
 ぬいぐるみを抱きしめるような抱きしめ方を、快斗はした。
 おまけに、いつまでも俺のなのに俺のなのにうるさい。新一は、近くにあった彼の耳たぶを噛む。
「……ってー……ひでーよ、お前」
「ヒドクナイ」
 笑って、笑いながら口付けた。
 指に指をからめ、腕に腕をからめ、誰よりも近くの鼓動を聞くのだ。
 
 二人でいて怖いことなど何もなかった。
 いつかは平坦な道の真ん中で、大口を開けた落とし穴に驚く日もあるのかもしれない。どこを探しても誰もいなくて、どうしようもなくて一人で泣く日もあるかもしれない。
 けれど今は、二人ともが、そういう全ての困難を乗り越えられる逞しさを持っていると信じている。
 たった一人のその人のために、一生懸命願って戦った傷痕は、きらきら光る星のようにどちらの胸にも残るだろう。もしも道に迷う時は、その星を見上げてまた泣けばいい。
 少しの間違いや自己嫌悪も、いつかきっと夜空を飾る星になる。